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4 インドネシア

4.3 事業の効果と経済への貢献

4.3.1 セクター・プログラム・ローン

1998年度に借款契約が締結されたセクター・プログラム・ローンは、1998年7月30日に行われたインドネシア支援国会合で我が国が1,500億円の供与を表明したものである。金額が大きいこと、迅速に支援を行う必要があったことから、支援内容の固まった500億円について10月16日に交換公文を締結し(INP-227)、その後1,000億円分について12月24日に交換公文を締結した(INP-23)。

インドネシアでは、1988年度よりセクター・プログラム・ローンが実施されてきた。金額は、1980年代後半から1990年代初めには毎年600億円前後であったが、1990年代中期には200億円から300億円ほどの水準となっていた。この借款は、円貨を国際収支改善のために利用し、円貨と同額の積み立てられたルピア資金(見返り資金)で、労働集約的な小規模プロジェクトを実施するものである。事業を行う分野は、初期は道路や灌漑など経済インフラであったが、次第に学校、居住インフラ、保健所など社会インフラに替わっていった。

INP-23とINP-24の見返り資金で実施する事業は、表4-4の8分野であった。地方政府分野に全体の3分の1以上が配分されている。

表 4-4 INP-22、INP-23の見返り資金で実施された事業分野
分野 金額 事業内容
農林業分野 341億円 末端灌漑水路のリハビリ、農道整備、漁港整備、社会林業プロジェクトなど
水資源分野 143億円 排水や溜池の修復・改善、灌漑施設の修復・改善、小規模洪水防御プロジェクト
農林水産業分野 84億円 エビ養殖インフラ整備、エビ・魚卵孵化場整備、養鶏センター整備、屠殺場改善
社会福祉分野 35億円 身障者支援センター整備、僻地農村・貧困層・児童・老人支援、スラム地域改善災害被災地改善
保健・衛生分野 68億円 地域保健所整備、感染症制御・環境改善、食品・薬品管理、地域拠点病院修復
道路分野 134億円 道路・橋梁改修
居住環境分野 98億円 給水施設整備、排水施設整備、住宅地域インフラ整備、農村開発拠点インフラ整備
運輸分野 27億円 鉄道リハビリ、フェリーターミナル整備、地方空港拡充、地方港湾整備
地方政府分野 521億円 末端灌漑水路リハビリ、小学校修復、市場整備、保健関連施設整備など

出典:外務省資料

事業は、分野ごとに異なる省庁が実施したが、全体の調整は国家開発庁(BAPPENAS)が行った。また、BAPPENASは地方政府分野の事業実施官庁でもあった。

インドネシアの社会・政治の混乱、地方分権の推進にもかかわらず、各分野の事業はほぼ予定通り進捗した。インターナショナルコンサルタントが雇用された分野では、これら事業の社会経済に対する評価分析を行っている。例えば、地方政府分野では、4,300万人日の雇用が発生し、全国平均で失業者の5.9パーセントを同分野の雇用で吸収した。また、水資源分野では、1999年4月から2000年12月までに1,670万人日の雇用が発生した。これは、約27万人の雇用を発生させたことに相当する。セクター・プログラム・ローン全体では、インドネシアで発生した失業者の約10パーセントほどを吸収することができたと推定される。

この事業では、いかに迅速にプロジェクトを形成し、それを実施するかが成功のためのキーポイントであった。現地調査のインタビューでは、各分野の事業方針を迅速に決定する際に、各省のJICA専門家が大きな役割を果たしたとのことであった。また、過去15年ほどのセクター・プログラム・ローンの経験や地方道路整備、地方インフラ整備、地方灌漑整備などの小規模インフラ事業の経験によって、各分野で小規模プロジェクトの発掘、選定、実施、モニタリングの体制が構築されていたことも迅速な事業の実施に貢献した。


7 INP-22、INP-23は旧OECF(現JBIC)の借款番号である。




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